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信託と遺言の違い

  • 文責:所長 弁護士 石井浩一
  • 最終更新日:2022年12月8日

1 遺言と信託は「当事者」が違う

信託とは、委託者が、委託者の財産から利益を受ける受益者のために、自分の財産の管理を受託者に委ねるものです。

遺言によって信託をすることもできますが、一番多いのは、委託者と受託者が信託契約を締結する形によるものです。

一方、遺言は、遺言者が、自分の死後に、自分の有していた財産を受遺者に譲ることを主な内容とするもので、遺言者が遺言書の作成をすることによって遺言自体は成立します。

このように、信託契約においては、委託者と受託者の契約であり、また、誰のための信託かという点で受益者が登場し、この3者を決める必要があります。

一方で、遺言においては、遺言者一人で法律行為は成立し、あとはだれに財産を譲るかを遺言者のみで決めればよいという点が異なります。

2 遺言と信託は「実現できる内容」が違う

また、信託と遺言の違いとして、遺言では認められない内容が信託では実現できるという点があります。

例えば、遺言者Aさんが「Bに財産を相続させ、Bの死後はCに財産を相続させる」という内容の遺言、いわゆる後継ぎ型遺贈というものは認められていないのですが、信託によればこのような内容を実現することも可能とされています。

さらに、遺言の場合には遺言の目的を定めるということはありませんが、信託の場合、信託目的を定めたうえで誰にいつ財産を渡すのかを定めることができますので、信託目的に応じた財産の承継が可能です。

受託者も、委託者が定めた信託目的に沿った受託業務を行うことになります。

このように書くと、信託の方が実現できる内容が広く、遺言を作成するより信託契約を締結する方が常に望ましいと思われるかもしれませんが、民事信託はまだまだ税法上解決されない問題等もあり、不確定な部分もあります。

そのため、遺言と信託の違いをきちんと理解した専門家に相談して、ご希望を実現する方法を判断されることをおすすめします。

3 信託銀行の行う「遺言信託」とは

信託銀行は、「遺言信託」を行います、とパンフレット等に記載していますが、これは、遺言書を作って信託銀行に預けるもので、上述した法律上の「信託」とは異なるものです。

この場合の「遺言信託」では、信託銀行が、公正証書遺言作成や、公正証書遺言の正本の保管、遺言の執行を行うことになります。

この場合の「遺言信託」とは、民法上の遺言と法律上の効果の点で異なる点はありません。

信託銀行が、遺言に関する手続を支援・代行することを総称して「遺言信託」としています。

4 遺言に関するご相談

当法人では、信託契約書の作成も行っておりますので、信託との違いを意識した遺言書作成のお手伝いから保管・遺言の執行までお任せいただけます。

遺言書を作成するべきなのか、信託契約書を作成するべきなのか悩まれる方も多いかと思います。

当法人では、お客様のご相談内容を伺って、適切な形態での作成をお手伝いさせて頂きます。

ご自身の遺産について、遺言や信託の活用をお考えの方は、当法人までお気軽にお電話ください。

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