遺言執行者がいても相続人は遺言書に基づいて相続登記等はできますか?
1 遺言執行者の地位と権限
遺言執行者とは、遺言者に代わって、遺言の内容を実現するために必要な事務処理を執行する者をいいます。
遺言者は、遺言で遺言執行者を指定することができます(民法1006条1項前段)。
この遺言執行者には、自然人だけでなく法人がなることもできるほか、特別の事情がない限り、一人または複数の相続人がなることもできます。
民法1015条では、「遺言執行者は相続人の代理人とみなす」とされており、相続の効果として相続人に帰属することになった相続財産について、その管理や処分についての遺言執行者の行為の効果が、相続人に帰属することになります。
そして、民法1012条1項において、遺言執行者の職務の権限および義務について、遺言執行者は「相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の権利義務」を有するものと定められています。
2 遺言執行者がいた場合に、相続人が遺言書に基づいてできること
民法1013条では、遺言執行者がいる場合には、相続人は、「相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない」とされています。
これは、遺言による財産の処分がされ、遺言執行者が選任されている場合に、相続人から相続財産についての管理・処分権限をはく奪して、遺言の公正な実現を図るための規定です。
この場合、相続人が遺言書に反する管理・処分を行ったとしても、その行為は無効になると判断されています(最判昭和62年4月23日民集41巻3号474頁)。
したがって、遺言で特定の不動産を特定の第三者に遺贈するとされている場合に、相続人が当該財産を相続により取得したとする登記手続き請求をしたとしても、当該登記手続きの請求行為は無効となります。
ただし、特定の財産を特定の相続人に「相続させる」とする遺言であった場合、このような遺言は、原則として遺贈ではなく、遺産分割方法の指定であると扱われ、遺言者の死亡時に直ちに当該相続人に相続を原因として承継されると解されています。
よって、当該相続人は、単独で所有権移転登記手続きを申請できます。
3 遺言で遺言執行者が定められている場合の相談
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